課題曲はCrossroadにしてみようか。クラプトンがその昔クリーム時代にライブ録音して、その演奏があまりにすばらしく有名になった曲で、オリジナルはかのロバート・ジョンソンである。クラプトンのほかにいろいろな人がカバーしているが、みな、オリジナル旋律を自分なりに変えて歌っている。 オリジナルのロバートジョンソンは難易度が相当高いのでちょっと後回しにして、まずは有名な、クラプトンのクロスロードから検討してみよう。この演奏は、ギタープレイとサポートのリズム隊があまりにすばらしく、歌についてはあまり語られていないようである。たしかに、ちょっと添え物っぽい歌い方をしているが、よく聞き込んで真似してみると、そうそう簡単には行かない仕掛けが随所随所にあって、実にクラプトンらしい軽い感じが出た、個性的な歌い方なのである。 最初の4小節を単純に12音階で取ってみるとこうなる E|----------------|----------------|----------------|----------------| B|----------8-8-8-|----------------|--8-5-----------|----------------| G|----------------|--575-7---5-----|--------7-7---5-|----------------| D|----------------|----------------|----------------|----------------| A|----------------|----------------|----------------|----------------| E|----------------|----------------|----------------|----------------| ここでお断りだが、僕がギタリストなせいで、譜面はタブ譜である。ギターの人は、このままギターでメロディを弾いていただきたい(ピアノしかできない人ごめんなさい)。歌わずにメロディだけ弾くと、破壊的にダサいフレーズに感じられないだろうか(笑)では、ギターと一緒に歌詞をつけて歌ってみよう
E|----------------|----------------|----------------|----------------|
B|----------8-8-8-|----------------|--8-5-----------|----------------|
G|----------------|--575-7---5-----|--------7-7---5-|----------------|
D|----------------|----------------|----------------|----------------|
A|----------------|----------------|----------------|----------------|
E|----------------|----------------|----------------|----------------|
I down the road fell on knee
went to cross down my
うーん、やっぱりダサい・・なぜでしょう。ひとつずつ解明してみよう。
クォータートーンは其の名のとおり半音の半分の1/4音のことで、ブルースの旋律がこの12音階から見ると中途半端な音程を取ることは良く知られている。ふつう、こんな風に説明される 「3度の音と7度の音がフラットする。これを黒人ブルース独特の音階として「ブルーノート」と呼ぶ」 これが、教科書的記述なのだが、この解釈は少なくともブルース歌いにとって良いとは言えないと思う。だって、こう言われると 「ふーん、とにかくフラットするんだ、それで悲しい感じになるんだな。そうだよな、ブルースは暗い音楽だしな、奴隷の音楽だもんな、悲しい響きを出すためにどうしても音程をフラットにしてしまうんだな、うんうんなるほど」 と思わないだろうか。ちょっと待った! こういうことを言う人がいたら「そういう、短調民族的考え方はいけませんよ、アナタ!」と注意してあげよう。では、どう解釈するべきかというと「ブルーノートとは、3度と7度の音がシャープする」と、こう考えましょう。もちろん、ここでいう3度、7度は、短3度、短7度のことでマイナーの響きを持った音である。つまり、明るい感じのメロディーをフラットぎみに歌って暗くするんじゃなくて、暗い感じのメロディーをシャープぎみに歌って明るくするのです。これは生き方の問題とも言えるのではないでしょうか。「明るく振舞ってるけどさ、あー、悲しい暗い・・」といってフラットして行くのではなく、暗い旋律から這い上がるようにシャープして歌うのである。そこに生きるパワーと喜びを見出す、そういう風に、みんな生きようよ、いや、歌おうよ、な! ・・と、そういうことである。 まあ、というわけで、先ほどの旋律の3度と7度の音をシャープ気味で演奏して、歌をつけてみよう。ギターの場合、シャープするのは、ちょっと弦をチョーキングするだけなので簡単にできる。 (斜体文字の音をクォーターチョーキングで1/4音ほど上げる) E|----------------|----------------|----------------|----------------| B|----------8-8-8-|----------------|--8-5-----------|----------------| G|----------------|--575-7---5-----|--------7-7---5-|----------------| D|----------------|----------------|----------------|----------------| A|----------------|----------------|----------------|----------------| E|----------------|----------------|----------------|----------------| I down the road fell on knee went to cross down my もうちょっと追求しよう。実は、これは、今までほとんど誰も書いていない気がするのだが、ブルースの場合、実はほとんどの音階をシャープ目に歌っていいのである。ただし、原則として、1度と5度はシャープすると音痴に聞こえるのでダメで、あとの2,3,4,6,7は別に構わない。もちろんむやみにシャープするんじゃなくて、カッコ良くなるようにシャープするのである。えー、ホントかよ・・と思う人は、たとえばロバートジョンソンの歌を徹底的に聞き込んで、できれば一緒に真似して歌ってみよう。え? これって呪文?? と思うほど正規の12音階から奔放に外れている様を発見するであろう。 あと、これはボーカル全般に言えることだが、人はテンションが落ちるとどうしても音程がフラット気味になるので、常に高めのラインを取る気持で歌ったほうが結果が良くなる。高めに音程を取る人と、低めに音程を取る人を聞き比べると、仮に音痴でも、高めの人のほうが気分が高揚した感じを受け、逆にフラット気味の人の歌は聞いていて暗い気分になる。暗いからダメだ、と言っているのではなく、もし力強い感じを求めてるのに暗くなってしまう人は、意識的に音程をシャープ目にとって歌ってみよう。 さて、というわけで、先のクロスロードの1,5度以外をシャープ目に演奏するとこんな感じになる (斜体文字の音をクォーターチョーキングで1/4音ほど上げる) E|----------------|----------------|----------------|----------------| B|----------8-8-8-|----------------|--8-5-----------|----------------| G|----------------|--575-7---5-----|--------7-7---5-|----------------| D|----------------|----------------|----------------|----------------| A|----------------|----------------|----------------|----------------| E|----------------|----------------|----------------|----------------| I down the road fell on knee went to cross down my こうやって単独で取り出してしまうと分かりにくいかもしれないが、ブルースはこれを繰り返し繰り返し歌うので、全体としての印象が変わって行くのである。
ここでは英語の正しい発音については解説しない。というか、これって英語教育の範疇であろう。とはいえ、これは英語の歌を歌う場合の基本中の基本なので、重要ではある。もっとも、最近思うが、第3世界の英語の歌を聞くと(たとえばボブ・マーリーやフェラ・クティほか多数)、決してBBCイングリッシュでも、カリフォルニアのニュースでもない、独特ななまり英語で堂々と歌っているので、別にイーグルスの面々のようなきれいなウェストコースト発音で歌う必要もないと思う。英語は言葉なので、発音より言いたいことを伝える方がずっと重要というわけである。 で、結局、重要なのは英語で意思疎通をすることだろう。ま、これは英会話教室マターなので、これも追求はやめておく。でも、自分の経験で言うと、僕は英会話は遅咲きで、三十過ぎから仕事の必要に迫られて勉強したが、英語がそこそこしゃべれるようになって英語の歌は確実に上達したのは確かである。まあ、これって一朝一夕で出来ることでも無いのでおいておいて、もっと安易な方法などをここで紹介しよう。あ、もちろん、英語ができる人は何の問題もないので読み飛ばしてください。 日本語は母音中心の言葉なので、子音がどうしても苦手なところがあると思う。例えば、Crossroadという単語だって、「クロスロード」と日本語読みすると母音は5つ、英語では母音はたったの2つである。「四つ角」と翻訳したって母音は4つだ。ということで、英語の歌を歌うときは、わざと子音を誇張するような感じで歌うといい。よく、単語の語尾の子音をちゃんと発音しなさい、というのがあるが、あれは実際はどっちでもいい。「Crossroad」だったら「d」の発音だが、スローバラードだったらともかく、別に最後のdをほとんど飲み込んでしまうことはしょっちゅうある。それより「Croassraod」だったら最初の「k」と「r」を強めに発音する方がずっと重要である。明治時代だかの英語の教科書に「Red」の読みがなに「ウレ」と書いていたのを見たことがあるが、確かに聞いたままだとレッドではなくウレである、語尾は聞こえない。 うーん、やっぱり発音指導みたいになってしまうが、仕方ない。あえて日本語読みで強調するポイントを示すとこんな感じだろうか。 ア(イ) ウェン(ト) ダウン トゥ ザ クロスロード フェ(ル) ダウン オン マ(イ) ニー ところどころカッコに入ってるのは弱くてあまり聞こえない音である。あるいは次の単語の頭とくっついてリエゾンしている場合もある。ウェントのトとダウンのダがくっつくなどである。まあ、こういったことも英会話マターですが。とにかく、こんな風にちょっと子音を誇張して歌って、崩すのはその後、という風に練習するといいと思う。 ここで、どうしても、もう一点だけ注意を書くと、子音を誇張すると今度は、例のよくあるやたらと「チャチュチョ」が聞こえる日本人的英語発音に走ってしまう可能性(桑田啓祐の日本語のような)があるが、あれはブルースでは避けよう。この例では例えば、「ダウン」を「ディヤウン」と発音してしまう、などのケースである。あれは実は子音を強調しているだけでなく、「無い音」まで発声してるからああなるのである。この例では「イ」の音で、これはdownの発音の中には無い。ホンモノのブルースマンで、あのチャチュチョ発音している人はいない。
ブルースやロックは感覚的な音楽だから、理論や基礎なんかよりハートが大切だ、という考え方もけっこう根強い。これは、たしかに、そうだが、これって、生まれつきそういう感覚を持ち合わせている人に限りで、そうでない人がこの感覚至上に陥ると、聞くに堪えない自己満足ボーカリストになることが多い。ブルースの場合、たいがいガナリタテル系になることが多い。しかし、ホンモノのブルースを聴いてみると、ガナッて歌っているブルースマンは非常に少ない。 ということで、まずガナったり、シャウトしたりするのは後にして、フォークソングでも歌うつもりで軽く発声して歌ってみよう。実際、むかしのブルースマンたちの半分以上は、普通の地声で、普通に歌っている。だって黒人だから・・ というのも確かに分かるが、あの黒人独特の歌い上げ系のたっぷりした声量で歌うブルースマンは、実は思ったより多くない。代表格はBBキングだと思うけど、そっち系はたしかに日本人にはきつい。どうしてもあんな風にブルースが歌いたい場合は、発声練習などちゃんとやらないと日本人には難しいかも。日本人にもいるけどね、グッチー祐三みたいな人とか。 でも、シティーブルースやシカゴブルースだって、割と地声っぽい感じの軽い発声でホントいい味を出して歌うブルースマンはごまんといる。そんなときは、やっぱり声や唄法に個性があるよね。ビッグビルブルーンジー、ジミーロジャーズ、ジミーリード、エディーテイラー、とかみんな独特の間違えようの無い、その人だけの味がある。なので、僕らがブルース歌うときも、自分の声を大事にして歌ったほうがいい結果が出ると思う。 あと、これも後で話したいけど、「歌う」より「しゃべる」感じで歌うのもいい。腹式呼吸とかはとりあえず無視(笑) だって腹式呼吸でしゃべる人っているの? 確かに、英語民族の発声の仕方って日本語と違って、とっても声量が上がる発声だけど、別に腹式呼吸が原因じゃないでしょ? だいたいブルース歌うのに、なんで腹筋したり腕立て伏せしたりしないといけないわけ? 自分の気持を相手に語る感じで歌うのがブルースの基本だと思う。なので、歌うより、しゃべる、で行くのもいい。もっとも、これもあんまり勘違いしすぎると、自己満足ボーカリストになるけどね。うーん、やっぱり、こうやって書いてると精神論が入っちゃってウマくないなー。ちょっと講座に戻しましょう。
さて、再びクラプトンのクロスロードを研究しよう。さっき、こんな風なところまで行った こうやって歌っても、まだ原曲の味わいはいまひとつ出ていない。これは、一つの音に割り当てられている一つの単語が、微妙に音程を持っていて、それが無いからである。この辺、一音にひらがな一つの割り当ての日本語では有り得ない事態で、これが英語のブルース(だけじゃなくて一般にポピュラー)がカッコよくなる訳なのである。
スイマセン! 未完です・・・ 出来次第アップしまーす。まだまだ書こうと思えばたくさんあるけど、やっぱりあらためて、ブルースの歌の講座って難しいよね。当たり前か(笑)
ブルースがうまくなりたいからって、酒色におぼれるのは止めましょう。それは本末転倒です。カミさん思いで平和に暮らしたブルースマンだっているのです。ブルースより家庭を大事にしましょう(笑)
講座なんかやってるけど、オマエの歌はどうなんだよ、と思うかもしれない。パソコンの前に座って内蔵マイクで歌ったロバートジョンソンが数曲あるので、これを載せておく。彼の歌はもうずいぶん長い間歌っているが、毎回いろいろ発見があって、少しずつ歌い方を変えてきて、今はこんな感じになっている。ロバートジョンソンを歌っていると、ブルースって本当にいい音楽だなー、とつくづく感じる。出会いに感謝である。 Terraplane Blues 音がかなり悪いです、ご勘弁を・・
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